四国南東部にある室戸阿南海岸(むろとあなんかいがん)国定公園は徳島県の伊島から高知県の室戸岬まで、約200kmわたる海岸線の国定公園です。
伊島周辺はリアス式海岸で大小の島々があり四国最東端の蒲田岬から由岐、日和佐、牟岐に至る間は断層海岸が続き千羽海崖(せんばかいがい)は高さ約250mに達しています。牟岐から海南、海部そして高知との県境の宍喰まではおだやかな砂浜と美しい磯辺が繰りかえされる海岸線で、熱帯魚などが陸から肉眼で見える程透明度の高い水質を誇っています。



このように変化に富んだ海岸線からなる室戸阿南海岸国定公園は、昭和39年(1964年)に国定公園に指定されました。平安時代には、弘法大師(空海)がその自然を背景に、厳しい苦行を積んだ場所でもあり、今でも四国88ケ所の霊場をめぐるお遍路さんの姿が見られます。
四国には多くの自然が残っていますが、中でも水辺の景観は美しく、平成15年(2003年)2月には一般公募からなる「四国みずべの88ケ所」が国土交通省四国地方整備局によって選定されました。室戸阿南海岸地域では、日和佐海岸と室戸岬、海部川と母川(ははがわ)が選ばれています。


高知県の東南端で大平洋に大きくに突き出しているのが、黒潮本流の接岸と深層海水の湧昇地で有名な室戸岬です。岬の上の室戸岬灯台からは青い空と海が見渡せ、自然の大きさを実感せずにはいられません。岬の海岸部には巨岩が並ぶ岩場が続き、打ち寄せる黒潮がしぶきをあげています。また室戸岬は、国定公園内でも特別保護地域に指定されており、さまざまなを植物を見ることができます。

亜熱帯植物であるオコウ、ウバメガシをはじめ、四国が北限のクワズイモや暖地の海岸の岩場に生育するイワタノイゲキ、室戸岬から蒲田岬にかけてのみ分布するシオギクなどが見られます。シオギクは本来、高山地の植物です。しかし温暖な室戸岬でも確認できるのは、氷河期の寒い時期に四国全域に発達したものの名残りであろうと言われています。
このように多様な植物の生態系がこの地の魅力をさらに引き出しています。
また、近郊では国の天然記念物に指定されているヤッコソウ(海部町に自生する亜熱帯性植物)やシラタマモ(出羽島周辺の海に自生する藻類の一種)が自生してたり、最近海部町中山で発見された天然記念物ハッチョウトンボも生息しています。


ウミガメのくる海岸
全長約500mの砂浜が続く徳島県の日和佐町の大浜海岸には、毎年アカウミガメが産卵にやってきます。昭和42年(1967年)、海岸にやってくるアカウミガメとその産卵地としてこの砂浜が国の文化財・天然記念物に指定されました。アカウミガメの産卵地は他の地域にもありますが、産卵地として国の指定を受けているのは、静岡県の御前崎と大浜海岸の2ケ所のみです。

同じ四国の四万十川が「最後の清流」であるならば、現在でもリゾート開発がない手つかずの室戸阿南海岸国定公園は「最後の海岸線」と言われています。